『The Last of Us(ザ ラスト オブ アス)』レビュー
2013.07.21 Sunday
※後半若干のネタバレがあります。ご注意下さい。
(寡黙+屈強+世捨て人)×(生意気+孤独+耳年増)
物語の王道パターンの1つとして「強いオッサン×謎の美少女」の組み合わせがあります。前回レビューを書きました「Bioshock Infinite」がまさしくそのフォーマットですし、他にぱっと思いつくところではセガの「龍が如く」、映画で「レオン」あたりでしょうか。探せばもっとあるでしょう。
今回紹介します「The Last of Us」はその典型とも言うべきストーリー。
過去を引きずった戦いのエキスパートがひょんなことから謎めいた少女を守ることになり、最初は思わぬ厄介事に辟易していたのが徐々に心を通わせていくといったベタな展開です。
また、ヒトに感染する菌類により人類が絶滅に瀕する世界で、キノコ人間や軍人、野盗に襲われながら目的地を目指すロードムービーでもあります。
「The Last of Us」はとにかく物語性を重視したゲームで、マップは広めですが展開は完全に一本道。
主人公のジョエル(おっさん)とエリー(少女)の関係性が一番の見所ですし、他の登場人物たちも良くも悪くも人間臭くて良し。
キャラの表情豊かな美しいムービーシーンでは良質の海外ドラマを見ている錯覚に陥ります。
以前「ファンタジーライフ」のレビューで「登場人物も悪人は存在せず」と書きましたが、「The Last of Us」の人々は悪人でもないし善人でもありません。主人公2人もそうです。全くもって「普通」の人(野盗らは敵として出るので悪人でしょうが、物語に絡む人物の話ということで)。
この人物の描き方が実にゲームらしくなくて良かったと思います。
どうしてもゲームは勧善懲悪モノが多かったり、敵組織の存在と行動に対する動機付け、ハッピーエンドのための導線などで物語自体が幼くなりがちです。
しかし「The Last of Us」は崩壊した世界を旅する2人にフォーカスを当てた作りで、パンデミックが起こった原因やナゾ解明もなく、フハハハハと高笑いする悪の根源などは登場しません。
ジョエルとエリーに焦点を絞ることで、世界観の解説よりも人間の「業」を深く浮かび上がらせる方を選んだのです。
ビジュアルの美しさもさることながら、キャラクター描写のリアルこそさが「The Last of Us」の高評価の一番の理由でしょう。
何で俺だけ気づかれるんだーー!? (||;′Д`)ノ
物語が良いとしてもゲームとしてどうかと言えば、悪くはないけど若干不満というところ。敵に見つからないよう影に潜んで不意打ちを仕掛けるかやり過ごすステルスアクションですが、キノコ人間は耳が良いという設定にもかかわらず、主人公以外はバタバタ歩いたり敵の目の前を横切ってもスルーされたり等とやや作りの粗さが目立ちます。
銃を持つ敵を倒しても弾丸回収できないのも辛いですね。まぁそれOKにしちゃうとかなりバリバリ撃てちゃうので厳し目のバランスにした結果でしょうが。
ナイフや打撃武器の使いでが良いものの使用回数が少ないのも厳しいかなと。
とは言ってもそんなに難しい部類のゲームでは決してありません。
先述の通り「物語を楽しむゲーム」ですから戦闘でそんなに苦労することは少ないかと。殺られちゃっても素早いリスポーンでストレスはゼロです。
先に進む道がわからなくても直ぐにヒントを与えてくれます。
ストーリー面は問題ないので、ゲーム性をもっと上げてくれていれば完璧に近い存在になれたのになと少々残念に感じました。
しかも何故かジョエルのナイフより高性能というw
ややネタバレで恐縮ですが、後半の一部はエリーがプレイアブルキャラクターになります。ジョエル同様にステルスアクションをする訳ですが、これがまた意外に新鮮。
影に潜んで息を殺し、銃を持ち徘徊するマヌケな大人の背後を取り、喉笛を掻っ切り一撃必殺!
若干14歳にして累々たる死体の山を築くランボークラスの白兵戦能力に驚嘆ッ!
アメリカの法律ではゲームでも映画でもコミックでも子供が殺されるシーンは完全NGですが、逆はアリなんだと今回知りました。
和ゲーでティーンエージャーが戦うのは普通のことですが、洋ゲー少女が血の出る生々しい戦いをするってのは初めての経験でしたよ〜w
エンディングでは今後の先をはっきり明示しない曖昧な終わり方をしています。
これはシーズン2を睨んだ終え方だと考えますがどうでしょうねぇ。
売れ行きもかなり好調らしいので出る可能性は非常に高そうではあります。
しかし出るとしても早くて2-3年先でしょうし、PS4でのリリースなのも間違いないでしょう。となればもっと先かも…。
でも出してくれるならば是非またジョエルとエリーに会いたいと思います。
その時にはちょっとエリーも大人びているかもしれませんね。
「龍が如く」の遥が成長していってるように。
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※ここから先はエンディングの感想を書いた超ネタバレエリアです。未クリア未プレイの方は見ないことをお勧めします。
ハッピーエンドでこれにて終わり!という閉め方でなかったのでスカッと終われないままでしたが(ラスボスという最後に乗り越える壁が無いってのも物足りませんし)、それだけに最後のジョエルの行動に関しては色々と考えてしまいます。
彼が正しいのかどうかは意見の別れるところでしょう。
ドラマの主人公としては実に正しい行動でしたがw
客観的に見ればマーリーンは理性的に正しい判断を下したと言えるでしょう。ボイスメモにあったようにその判断を下すのも断腸の思いだったようですが、苦悩しつつも組織をまとめる手腕も有りまさに女傑というべき人物です。
それだけに感情に流されたジョエルに殺されたのも惜しい話で。
出来ればここでゲームらしいインタラクティブ性があれば良かったなと想像しちゃいます。
一発撃った後のマーリーンに対してとどめを刺すか刺さないか。その選択肢を。
とどめを刺せばあのままのエンディング。
刺さなければ即捉え返されてエリーは奪われジョエルは射殺。しかし人類が救われる光明が見えた!という前向きなエンディング。
これならどちらも納得出来つつモヤモヤもあるんでイイんじゃないでしょうか?w
それにしても最後のエリーの問いかけに「誓う」と即答したジョエルの大人力がたまりませんなw
ファイヤフライから力づくで脱出してきたってのもエリーは薄々気づいてるでしょうし、本当なら知りたくない上で意を決して尋ねたのにスパーンと躊躇いなく嘘で返す大人っぷりをカッケーと思いましたよw
こういう強く逞しく時には真実を曲げることも厭わないオヤジになりたいものです。
- 洋ゲー レビュー
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最初私も買おうか悩んでいたのですが、ステルスが得意ではないので…
各所でも高評価のようですし、気にはなるんですけどね。
>龍が如くの遥
ゲームを通して人の成長を見れるのは良いですよね。シリーズが続くとしたら、そこにも期待してしばらく様子見ますw