『Alice Madness Returns(アリス マッドネス リターンズ)』レビュー
2011.09.25 Sunday
暗鬱少女はチェシャ猫の悪夢を見るか
詳しい内容は知らないとしても「不思議の国のアリス」のタイトルを知らない人はいないでしょう。
19世紀にイギリスで書かれた児童文学で、無垢な少女の不思議な世界での物語です。
その摩訶不思議な世界に「狂気」のエッセンスをひと匙加えてゲーム化したのが「Alice in Nightmare」。ファンタジーからかけ離れた悪夢的な世界観がマニアックなファンから支持されたゲームです。
「不思議の国のアリス」と「鏡の国のアリス」の2つの冒険を終えたアリスでしたが、ある日彼女の家に火災が発生し家族全員を亡くしてしまいました。火事は私が起こしてしまったのかという自責と疑念は彼女の心を蝕み、精神病院に入ることになってしまったのです。
そして心を病んだまま過ごした10年後、かつてアリスを冒険へいざなった白ウサギが再び現れ彼女を再び不思議の国へ導きます。
しかしそこはかつてのワンダーランドではなく、狂気と不条理の支配するアリスの心のままの世界と成り果てていました。
美しい世界の再生と自身のトラウマ克服のため、3度冒険に出るのです。
これがその「Alice in Nightmare」のプロローグ。
そして「Alice Madness Returns」はその続編。
悪夢の国の女王を倒したアリスでしたが、心は晴れず、依然として精神病院で過ごす日々。
火災の悪夢は未だ彼女を捉えたままだったのです。
外は暗鬱な空気が澱む冴えない港町で、ゴロツキに街娼や飲んだくれがたたずむだけの夢も希望もない町。
その中でアリスは希望の欠片である白ウサギを見つけます。その姿を追い、彼女は「狂気の国」へと旅立つのでした…。
咎を背負った少女の贖罪と探求の旅
「Alice Madness Returns」の良いところはその世界観でしょう。
狂気に満ち溢れたワンダーランドや禍々しいキャラクターのデザインは素晴らしく、ただグロいキモいエグいだけじゃなくてどこかファニーな面を残しているのが魅力的。腹部のマークが抜けたトランプ兵なんかもいいデザインしています。
対して現実世界は彩度が低く陰気で生命力がありません。出てくるのも妙にキャラ造形が歪な人物ばかりで東欧のキモい人形劇のよう。この対比が見事ですね。
Drink me の飲み物を飲んだ後の小人化要素やお茶会など原作をゲームに落とし込んでいるのも上手いです。Eat me のケーキイベントは最高でしたわw
しかしストーリーはやや分かりにくく、チェシャ猫のセリフは哲学的ですらあります。しかし、アホでも分かるようにくどくど説明されるよりかはこのほうがゲーム内容に適しているのでOKでしょう。
で、ゲームとしてはどうかと言えば割と単調。
ジャンプでぴょんぴょんと進んでいき、各所のギミックを操作して足場を作り進めていくタイプ。いわゆるアスレチックゲー。
それが結構長〜いのでやや飽きます。1ステージ3〜4時間ぐらいで全6ステージ(最終ステージはラスボス戦のみ)。もう少しシェイプアップすべきだったかもしれません。
さらに難易度は案外高め。
ジャンプのタイミングや時間設定がシビアな箇所が所々あって意外に苦労しました。概ねサクサク進む中でそういう箇所がポロっとでてくるので、レベルにムラがあるように感じましたね。
というものの、墜落死した場合はロード無しで即座にリスポーンするので、やり直しに対するストレスは殆どありません。ジャンプミスで墜落死ってのは頻繁に起きますので、ここは心地良くてよかったです。
ジャンプアクションと戦闘ばかりかと思いきや、唐突に2D横スクロールゲームになったり、64マリオの滑り台のコイン集め風やらスーパーモンキーボールっぽいもの、さらには2Dのソニックみたいなタイプのゲームが挿し込まれたりします。
このバラエティ感はイイですね。
ちなみにアクションの度にスカートひらりひるがえしますが、どう頑張ってもその肝心のデルタ地帯を拝むことは叶いません。
残念ながらそういうゲームではないようですw
総評としては「雰囲気は最高、ゲームとしては単調で長い」ってところでしょう。
ステージの見た目は変わってもやってることはほぼ一緒ですから、横スクロールゲームなどばかりに注力しすぎないで、メインパートにこそバリエーションを出して欲しかったです。
悪いゲームじゃないんですが今一歩でしたね。
アリスの奇妙な冒険 -Alice's Bizarre Adventure-
この「狂気の国」はまさにアリスの心の写し鏡であり、また彼女自身であるとも言えます。
しかし廃墟や火山に朽ちた玩具など薄暗いステージが多い中に清々しい空のステージがあるなど、心はまだ闇に閉ざされていないことが窺い知れます。
アリス自身も現実では髪の毛ゴワゴワの痩せぎす病んでる系なのに、ワンダーランド内ではさらさらヘアーで血色の良い快活な美少女だったりします。
このあたりにも女としての願望が現れているのですね。
よく「中二病」なんて言いますが、まさに「Alice Madness Returns」はアリス自身の中二病冒険譚。それも精神を患っているだけに重症です。
ややネタバレをしますと最後の戦いを終えた後、彼女の行く末がどうなったのかと言うのは明確にされていません。
心の旅の果てに辿り着いたところはなんだったのか?
平穏な現実世界なのか、終わらないワンダーランドなのか?
良ければ一度、彼女の奇妙な冒険に同行してみてはいかがでしょうか?
- 洋ゲー レビュー
- 23:31
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あ、デルタ地帯を拝もうとしたのは僕も一緒ですからwww