『Saints Row(セインツ ロウ)』レビュー
2007.10.28 Sunday
偉大な車泥棒は偉大な先駆者
かつてRockstargamesの生み出した「Grand Theft Auto 3」は非常にエポックメイキングなゲームでした。
箱庭世界で自由勝手に遊ぶ楽しさというのは64マリオやゼルダですでに提示されていましたが、「GTA3」の画期的だったのは、その世界中に思いつく限りあらん限りの要素を落とし込み、それらを好きなようにつまみ食い出来るようにした、という点でしょう。
それに加え、現実ではやってはいけない犯罪を思う存分行えるという点をゲームデザインの核に据える事で自由度をさらに飛躍させたのは言うまでもありません。
この方法論は様々なGTAフォロワーを産ました。傭兵の要素を加えた「Mercenaries」、近未来SFの「Crackdown(邦題:Riot Act)」。変わったところでは、宇宙人GTAこと「Destroy All Humans!」、サメゲー「JAWS unleashed」。例を挙げればキリがありません。
箱庭世界で遊び放題というゲームははポリゴン&大容量ハードの時代の寵児と言っても過言ではないでしょう。
さて、今回の「Saints Row」はGTAの今現在の最高峰「GTA SanAndreas」にひじょ〜〜〜にソックリ!
はっきりとパクってると言ってもいいでしょう。
カラーギャングによるチーム抗争が主題ですが、カラーギャングと言っても殆どマフィア状態なので「GTA 3」っぽくもあります。
ここが似てる、あそこが一緒と言えば枚挙にいとまが無いので割愛しますが、とにかく似た点が多いのです。
一番欠けているのは「志」
確かにGTAシリーズよりかはグラフィックは綺麗です。しかしそれはハード性能が上なのだから当然の事。むしろ360のゲームの中では美しい部類には入りません。爆発エフェクトが凄いだとか、グラフィックの向上とか言われても、それ以上のものを多々見ているので全然凄いとは思いませんでした。
仲間のAIが賢くて銃撃戦に役立つ、敵側も主人公だけでなく仲間の方も攻撃するなどと、AIの性能が良くなってるのは分かります。他にも墓地で悲しんでいる人がいるだとか、断崖絶壁で自殺をしようとしている人がいるだとか、全体的なNPC(ノンプレーヤーキャラクター)がさらに人らしくなった!なんてのもあります。
しかしどれもこれも「ふ〜ん」って感じ。
AIを誇りたいなら「Oblivion」クラスまで上げてこいと言いたいですね。
全体的に「GTA SA」を参考にしてるのはよ〜く分かります。システム面の悪い所に手を入れているのも評価出来ると思います。しかし、GTA以上の物を作ってやろう!という意気込みはまるで感じられません。
GTAと比較して良くなってるのはシステムの部分であって、ゲームデザインではありません。
デザインにオリジナリティがなければただの劣化コピーであって、売れ線の似たゲームを作っただけの志の低いタイトルです。
さらに言うなれば「GTA 3」と「GTA SA」を足して3で割ったようなゲームです。
言っておきますが、私は模倣を否定しません。
ゲームの歴史を紐解くとそれは模倣の系譜に他なりませんので。
しかしそこから1歩秀でた部分がなければ歴史の塵と化すのも必然でしょう。
さらに気になった点もちょこちょこあります。
まずは都会の割に交通量が少ない。
これはGTAの欠点でもありましたが、GTAの場合はハードの制約なのかと諦めていましたが、360でその言い訳は通用しません。警察が本気になった時はルパンを追いかける埼玉県警ばりのチェイスを見せてくれますので、本当はやれば出来る子なのにやっていません。
それに日本語訳も気になりました。
概ね問題ありませんが、敵勢力のメキシカンギャングのイベントシーンで幹部が激昂した時などにポロっとスペイン語を話すのですが、ここの字幕が、
(スペイン語)
と出るのみ。
なんじゃそりゃあああ!手抜きもたいがいにせェよ!
大体言わんとすることは分かりますし、北米版の字幕がどうなってるのかは知りませんが、そりゃねェだろうって。
それに車中の会話で字幕でない時も多々あります。こういう所の会話が面白かったりするのにねェ。
しかし和訳の中で、ドラッグをサプリ、売春婦をエステティシャンなどと湾曲させた言い回しが妙な味を醸し出してたりしてますので訳者のセンスは悪くないと思います。
とまァ、クソミソにコキ下ろしましたが、全く持ってプレイする価値のないクソゲーかと聞かれればそんな事はありません。
先述の通りGTAのシステム面を改善しプレイアビリティを上げているので遊びやすくなっていますし、一部のミッションを除いて難易度もおおむね低めです。GTAを知っている人はもちろん、知らない人にも取っ付きやすいと思います。
ゲームプレイとは直に関係ない部分で細かな作り込みが感じられます。
好意的にとらえれば、GTA SAのようにとにかく「大きい事は良い事だ」と種々様々な要素を入れ、広大なマップを用意して肥大化させる、という方法ではなく、ある程度の範囲内に限定して密度を上げる方向を選んだ、とも解釈出来るでしょう。
行こうぜ、ピリオドの向こうへ!
「Saints Row」の特徴としてカスタマイズ性が高い事が挙げられます。オブリビオンライクなキャラメイクが出来、人種も白人・黒人・ヒスパニック・アジアンから選べ、HipHop系デブ黒人からPankなモヒカン白人まで服装も宝飾品も含めて様々に細かく作り込む事が出来ます。
もちろんタトゥーも彫れます。似たような柄しかなかったGTA SAと違い、和彫りっぽいや漢字もありなかなかステキ。
ちなみに私のキャラは腹に大きく「自由」と入れてそれを見せつける為にパンイチ。
ズボンを履かないのは…ついでというかトータルコーディネートですねw
そして忘れちゃならないのが車のカスタマイズ。
GTA SAでもカスタマイズ出来ましたが、いくらお金をかけても壊すとオシマイなのでやる価値はあまりありませんでしたが、「Saints Row」ではガレージに登録すれば爆発しようが海に沈めようが何故か戻ってくる四次元ガレージ仕様なので思う存分乗り潰せます。
カスタマイズはボディカラーからニトロ装着まで広く細かく行え、クルマ好きな人ならたまらないでしょう。曲のプレイリストも自分で持ち込んだMP3データが使えますので、かっぱらってきた高級セダンをマジョーラカラーでエアロバキバキのDQN車に改造し、氣志團かけながら女の子とドライブして、バーガーショップの前でウンコ座り、なんて夢のヤンキーライフもエンジョイ出来ますw
今開発中の「Saints Row 2」ではバイクも乗れるらしいので、是非ともこれも改造出来る仕様にして欲しいですね!
日章カラーのロケットカウルをブチ上げて、三段シートに直感マフラー装備した珍走バイクが乗れるようになれば「チャンプロード」が取り上げてくれ、360の売れ行きも上がるかも知れませんよw
THQクン、そこんとこ夜露死苦!
次作でリベンジ出来るか?
このゲームはトータルで100万本以上売れたそうですが、それはGTAクローンと言われつつもそれなりの楽しさを提供出来た結果なのだろうと思います。
そして今、続編が開発中だそうですが、近々「GTA 4」も控えている中では生半可なパワーアップではまた「パクリゲー」の烙印は外されませんし、いつまでたっても二番煎じのままです。
正直言って「Saints Row 2」は「GTA 4」を越えるとは思っていません。
同じシステムの同じベクトルのゲームですので比較されるのは避けられませんが、その中でも「このゲームはここが最高!」と言える部分があってこそ初めて肩を並べられるのはないでしょうか。
かつてナムコの「鉄拳」や餓狼伝説も出た頃はパクリ呼ばわりされていましたが、その後の進化で文句なく「バーチャ」「スト2」と肩を並べられる存在となりました。
「Saints Row 2」にも期待出来る要素はあると思いますので、次作は是非とも頑張って貰いたいと思います。
- 洋ゲー レビュー
- 16:30
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